時間は盗まれると死んでしまう(モモ/ミヒャエル・エンデ)

時間は盗まれると死んでしまう(モモ/ミヒャエル・エンデ)

「私はいまの話を、過去に起こったことのように話をしましたね。でもそれを将来起こることとしてお話ししても良かったんですよ」

ふと、改めて、ミヒャエルエンデのモモを手に。現代社会の普遍的なテーマを、痛烈に鋭く指摘しながらも、ロマン主義的な童話としての、詩的夢幻なたのしさと美しさたるや。

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「時間どろぼうたちは人間の時間をぬすんでいきている。しかしこの時間は、ほんとうの持ち主からきりはなされると、文字どうり死んでしまう。人間はひとりひとりがそれぞれ自分の時間を持っている。そしてこの時間は、ほんとうにじぶんのものであるあいだだけ、生きた時間でいられるのだよ」

「人間がそういうものの発生をゆるす条件をつくり出しているからだよ。それに乗じて彼らは生まれてきていた。そしてこんどは、人間は彼らに支配させるすきまで与えている」

「時間はきっと一種の音楽なものなの。いつもひびいているから人間がとりたてて聞きもしない音楽。でも、私は時々きいていた気がする。とても静かな宇宙のような音楽。あの音楽はとおくから聞こえてきたきがするけど、でもわたしの深いところでひびき合っていた。水の上に風が吹いておこるさざ波みたいに」

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今を生きる僕らは自分たちの内側で宇宙のようの広がり奏でる美しい音楽にどれほど心を傾けられているだろうか。自分らしい、ほんらいの自分とつながった時間(Authenticity)を取り戻すことの大切さをこんなにもたのしく、美しく伝えてくれるなんて。

河合隼雄の日本文化の中空構造じゃあないけど、最近民話や神話、そして児童文学を改めて手にとってみていたのだけど、たまたまお花を嗜む友人と文化的な余白の話をしていたところで色々とシンクロ◎

いやぁ、「はてしない物語」と並び、子供ができたら必ず家に置いておきたい一冊。彼の生まれ育ったミュンヘンというまちにも行ってみたいな。

モモ (岩波少年文庫(127))