インパクト・インベストメント(社会的投資)についての雑感(Pioneer Gap&社会的投資の今後)

インパクト・インベストメント(社会的投資)についての雑感(Pioneer Gap&社会的投資の今後)

SOCAP(Social Capital Market)という社会的投資の最前線のプレイヤー達が集まる国際カンファレンスに昨年、今年と参加して感じた雑感をメモ(備忘録)。

 

◯シードステージの社会的起業への投資とPioneer Gapについて

Upaya Social VenturesとかUnitus Seed FundsみたいなSeed Fundが実績を重ねてきているとは言え、やはり結局Acumenのように、フィランソロピーマネーにbackupされたかたちでしか、Pioneer Gapは埋められないのだろうか。

社会的利益と経済利益の優先バランスは、インパクトインベスティングと言われる領域の中でもかなりばらつき(社会的投資のスペクトル)があります。投資先のステージによっても状況が違うので、多くのインパクトインベスターは従来の投資利益率を求める結果、どうしても成長期の投資先に投資が集まりやすく、アーリーステージのソーシャルスタートアップへの投資を敬遠してしまいます。これがPioneer gapと呼ばれる現象です。

アーリーステージの社会的起業へのインパクト投資とPioneer Gapについて、 だいぶ長いですが、SSIRから良記事がでていました。
Closing the Pioneer Gap

シードステージのPioneer Gapを埋める解決策として、「目標とする経済的リターンを5%以下に設定」「GRFのように、投資とフィランソロピーを組み合わせたブレンド投資型」「Acumenのように、明確な投資リターンを設定しないフィランソロピーマネーを扱うファンド」などがあげられていますが、いずれにせよどこかにTrade-offがあるかたち(あるいはそういった二元論的な捉え方)では持続可能なモデルの構築は難しいのだろうと思います。

(Pionner gapに関する議論としていると、逆に、ここにベンチャー・フィランソロピーの明確な役割があるのだと改めて実感します。)

 

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◯インパクト・インベスティングの今後

 65%以上のインパクトインベスター達がマーケットと同様のリターンを要求する中で(これはアメリカでのImpact Investingの動きを考えれば当然の流れ)、フィランソロピー的な方向に流れていってしまっては、結局あまり何も変わらない、と強く感じます。

一方で、Investment-readyなソーシャルベンチャーの数が少ないのも事実。 要は、インパクトインベストメントって騒ぐに十分なだけの環境やインフラが世界的にもまだまだ全然整っていないのであって、まずはベンチャーフィランソロピー的なお金の流れる仕組みと、投資を上手く使い倒して成長していける(Hands-on投資に十分応えられる)ソーシャルベンチャーが育つ基盤を作るのが先なんだろうな、と思う。JPモルガンのレポートで新しいアセットクラスなんていう言い方で注目されちゃったから、よくなかったんだろうなぁ。
(2010年にJPモルガンから発表されたレポート” Impact Investments: An Emerging Asset Class”で、社会的投資の対象が新たな資産分類として定義されたため、成長市場として世界的に注目を集めました)

 

Without a structural change in the capital market for social businesses that attracts more impact investors, many will fail to bridge this gap. Impact investors are frustrated that there are not enough investment-ready companies, which makes it hard for them to meet their stated financial and social goals.

ideology—the simple notion that any investment involving trade-offs or submarket rates of return inherently is bad investing and is unsustainable. Of the 71 companies in Acumen Fund’s portfolio, 67 received grants at the blueprint, validate, or prepare stages. Enterprise philanthropists are not only willing to make grants, they are also willing to invest time and money in social businesses at the early stage of their growth. By doing so they are helping firms bridge the Pioneer Gap.  – Closing the Pioneer Gap

 

以下、社会的投資の世界的な動向を知るために参考になる記事リストを記載しておきます。

– “From Blueprint To Scale”, Monitor Group (2012) http://tiny.cc/jqpc2w 
これは界隈ではみんな読んでいる非常に有名なレポート。ちなみにBlueprintは、シードステージのstartupのことで、Validate, Prepare, Scaleとステージが移行していきます。

– “Priming The Pump: The Case For Sector Based Approach to Impact Investing”, Omidyar Network (2012) http://www.omidyar.com/pdf/Priming_the_Pump_Sept_2012.pdf

– impact capital alone will not unlock the potential of impact investing for the global poor.NEXT Billion (2012) http://www.nextbillion.net/blogpost.aspx?blogid=3178

– “A Portfolio Approach To Impact Investment : A Practical Guide to Building, Analyzing and Managing a Portfolio of Impact Investments”, JP Morgan (2012) http://www.ignia.com.mx/bop/uploads/media/121001_A_Portfolio_Approach_to_Impact_Investment.pdf

– “Investing For Impact”, Bridges Ventures (2010) http://www.bridgesventures.com/sites/bridgesventures.com/files/Investing%20for%20Impact%20Report.pdf

– “Impact Investment: An emerging asset class”, JP Morgan Global Research (2010) http://www.rockefellerfoundation.org/uploads/files/2b053b2b-8feb-46ea-adbd-f89068d59785-impact.pdf
社会的投資の対象が新たな資産分類として、世界中のお金持ち達に注目されるきっかけとなったJPモルガンから発表されたレポート。

– “5 Key Trends In Impact Investing” , Forbes (2013) http://www.forbes.com/sites/groupthink/2013/05/02/5-key-trends-in-impact-investing/