不耕起栽培、ゲイブ・ブラウンの土を育てる、拡張生態系における人の役割と希望。

↑は、春日部の協生農園の始まりの集いでお持ちした本たち。
こんな感じの世界観の農園になるといいなと。笑

真ん中あたりにある、ゲイブ・ブラウンの「土と育てる」には、「土を育てる5つの原則(土をかき乱さない、土を覆う、多様性を高める、土の中に「生きた根」を保つ、動物を組み込む)」というのが書かれているのですが、協生農法とシンクロしている部分が多くあります。

協生農法についてはこれまでの記事を参照いただけたらと思いますが、協生農法には「無農薬・無肥料・不耕起」「人が持ち込むのは苗と種だけ」「土壌構造には介入しない(耕さないだけでなく、例えば、根は抜かない)」「多様種の混生密生」といった原則があります。

協生農法の理論は、生命が海から陸へと上陸し、さまざまな生き物たちが協働して陸地の表土の仕組みや生態系を作り上げてきた歴史に基づいたものですが、

それは当然人間業ではないわけで、植物たちが微生物や土中の生き物たちと協働しながら土壌をつくり耕し、鳥や虫や小動物たちがそれぞれの生命の営みの中でさまざまな養分をめぐらせていく循環の中で、自然の恵みをいただいている。

では、人の役割はなんなのかというと、多様な(有用)植物を持ち込んでいくことを通じて、生物多様性を高め、生態系の循環を回復・再生させていくような方向に積極的に関わっていくこと。協生農法の根幹にある「拡張生態系」と呼ばれる考え方です。

「人が持ち込むのは苗と種だけ」という原則は、裏を返せば、それこそが人間にひらかれた役割だということ。実践マニュアルの言葉を借りれば「人間とは、本能を超えて意識的に、生態系を拡張することができるはじめての生物種である」。

生態系の全球崩壊が迫るほどに自然環境を破壊してきたのが人間かもしれないけれど、それ以上に、この地球の生き物の一員として、生態系を回復・再生に向かわせることができる存在でもある。

だから、協生農法の実践は、

いつ食糧危機が来てもおかしくないような時代にますます必要となっていくはずの、食料自給のスキルやコミュニティ形成であると同時に、そうした希望を未来のこどもたちにつなぐ営みでもあると思っています。

生態系回復と食糧生産(あるいは農的事業)をどこまで両立させられるかはわからないけれど、春日部の圃場でもその可能性や希望を子どもたちやより多くの人たちと分かち合い、探究し、実践していける機会になるといいな。

ちなみに、協生農法の原則の一つである「不耕起栽培(=耕さない農法」は、土壌の炭素固定効果があるとされていて、カーボン(あるいはリジェネラティブ)ファーミングや4パーミル・イニシアチブとして気候変動に対する解決策として国際的にも注目が集まっています。協生農法的には生態系回復・構築理論に基づく結果であり、炭素だけの話にとどまらない可能性を秘めているのではと思っています。

炭素固定の効果検証と同時に、特に日本では田畑を耕すこと(や有機)への強烈な固定概念から自由になることが前提として必要になってくるのではないかと思っていますが、実は、それによってひらかれていく人と自然生態系とのより生成的な関わり方は生命の環の一員としての人のウェルビーイングをも支えていくことになるのではないでしょうか。協生農法(や稲の多年草化栽培)の実践はそうしたテーマともつながってくるはずだと思っています。

協生農法(およびシネコカルチャー)について
「協生農法(シネコカルチャー)」は、食糧生産と環境破壊のトレードオフや、人か自然かの二元論を乗り越えて、生態系が本来持つ力を多面的・総合的に活用する生態系構築技術(詳細はSony CSLのHP )。学術的には、人の営みが生態系構築および生物多様性の回復に貢献していく「拡張生態系」という考え方に根ざしています。(株)桜自然塾の大塚隆氏によって原型が創られ、Sony CSLの舩橋真俊氏によって学術的定式化がなされています。

ご興味ある方はEcological Memesで開催しているセッションの様子や記事もご覧ください。
生態系の“あいだ”を回復・構築する「協生農法」とは?
地球の生態系に包摂された生命として人はどう生きるのか 〜自然と人の“あいだ”を取り戻す協生農法〜
EMF21レポート② シネコカルチャー(協生農法)とは何か【前編】
人間と自然の共繁栄のかたち。生態系を拡張させる「協生農法」の実践
・拡張生態系のパラダイム – シネコカルチャーの社会実装の契機をさぐる-(舩橋真俊氏) 

【シネコカルチャー実験記録の記事一覧】
耕作放棄地で協生農法をはじめました[シネコカルチャー実験記録①]
植物は生長に必要な物資を自ら調達する~横に伸びるトマトと協生農法実践マニュアル~[シネコカルチャー実験記録②]
遠野で協生農園を訪問。美しき緑の焚き火。[シネコカルチャー実験記録③]
畝をつくらない区画をつくってみた。[シネコカルチャー実験記録④]
結実過程のドラマ。オクラ、ピーマン、トマト、ジャガイモほか。[シネコカルチャー実験記録④]
全36科87種。Scrapboxで協生菜園の植生リストをつくってみました。[シネコカルチャー実験記録⑤]
二子玉川のコミュニティ畑プロジェクト「タマリバタケ」で協生農法はじまります [シネコカルチャー実験記録⑥]
ベランダでもできる小さな生態系観察。協生プランターのすすめ [シネコカルチャー実験記録⑦]
種から種へ。自家採種を通じてみえてくる植物の姿と枯れの凄み。[シネコカルチャー実験記録⑧]
タマリバタケの協生菜園のその後<秋分〜冬至>[シネコカルチャー実験記録⑨]
協生菜園で育てた蓼藍で生葉染め、そして種取り。植物の生命力を身にまとう。[シネコカルチャー実験記録10]
協生菜園に春がきた<タマリバタケの冬至〜春分>[シネコカルチャー実験記録11]
協生農法の生みの親・野人ムーさんのところに行ってきました[シネコカルチャー実験記録12]
無肥料・無農薬でも虫に食われないのはなぜか。混生密生の多様性がもたらす縁起と恵みの実感。[シネコカルチャー実験記録13]
埼玉・春日部の農園で協生農法をご一緒にやりたい方を募集しています。[シネコカルチャー実験記録14]
春日部にて協生圃場プロジェクトがスタート。秋分の集いにて[シネコカルチャー実験記録15]
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混生密生の世界と収穫による生態系への介入[協生農法実験記録17]
かすかべ協生農園のお野菜詰め合わせセット販売
※このブログは、個人の実験的な観察・実践記録であり、公式なやり方や内容を記載しているものではありません。