ウディアレンと生物学 - 壊す仕組みと動的平衡 -

ウディアレンと生物学 – 壊す仕組みと動的平衡 –

昔のウディアレン特集を読んでいたら、「やがて宇宙は膨張し爆発してしまう」というウディ映画の代名詞的なセリフに「宇宙が終わるまで待たなくても大丈夫ですよ」と返答する生物学者福岡伸一さんのコラムがとても面白い。

 

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・これまで生物学はずっと「作られる」仕組みを研究してきた。細胞構造の作られ方やタンパク質合成過程、DNAの複製機構など。それらは確かに驚くべき精妙さを持って運営されていた。

・しかしもっと重大なことが近年になって判明した。生物は作ることよりも「壊すこと」を一生懸命やっているということだった。作るやり方は基本的には一通り・一義的であるのに対して、壊し方、壊され方は千差万別、何通りも良いされており、いかなる時でも分解が滞らないように何重にもバックアップが用意されていることがわかってきた。だから、21世紀の生物学は、プロテアソーム、オートファジー、アポトーシスなど壊す仕組みの研究が主流になっているのである。

・生命は約37億年もの間、いかにして存続してきたのか。生命は、崩され壊されていく自然の掟を前提に自分をやわらく作った。その上で自らを常に、壊し・分解しつつ、作り直し、更新するという方法をとったのである。この絶え間ない分解と更新と交換の流れこそが生きているということの本質だった。これを私は動的平衡と呼んでいる。

・私たちは常にミクロなレベルで、細胞や分子のレイヤーでどんどん更新され続けている。一年前に私を構成していた分子や原子のほとんどは入れ替わってしまっている。物質的に一年前とはすっかり変わってしまっているのだ。ー(中略)ーだがそんなことを言っていると社会が成り立たないので、人間は個人の同一性と記憶の一貫性を基本に、虚構としての共同幻想としての制度、契約、法律を作り上げてきた。
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「作る仕組み」ではなく「壊す仕組み」と動的平衡、そうか、なるほどなぁ。