稲刈りを終えて。稲の多年草化栽培の行方は…?
千葉での多年草化栽培の田んぼ、先月ようやく稲刈りを迎えました。 直樹さんにご一緒させて頂き、何もなかったところから畦をつくり、湧水をひいて田んぼそのものをつくるところからやってきたということもあり、やる前からすでに感慨深…
二元論を超えて、生命のあわいを漂う -生命の宇宙を身にまとう染織と薬草医学の通奏低音 -(宇宙樹/竹村真一・その2)
Cosmic tree 宇宙樹 / 人類学者 竹村真一前回は、夏至の高揚と相まって内容に入る前に終わってしまったので少しづつ中身に。 <今回の目次>・花をめぐる日本人の霊妙な感覚と原風景・植物性に根ざしたコモンセンスと文…
植物を通じて世界と出会いなおす。生命再生の時代の道標(宇宙樹/竹村真一 その1)
Cosmic tree 宇宙樹。人類学者 竹村真一。 年明けにふと久しぶりに手に取ってみたのだけど、なかなかに凄まじい本だった。 なんというか、これからの時代の拠り所となるエッセンスが大袈裟でなく、かなり鮮明に凝縮されて…
マツタケその3:スケーラビリティ、撹乱化のビジネス、潜在的コモンズとLife-affirming(マツタケ 不確定な時代を生きる術 / Anna Tsing, 赤嶺淳)
「マツタケ 不確定な時代を生きる術」をめぐるマツタケ雑記その3。 今回は、本書を読み解く上での重要なキーワード「スケーラビリティ」と「潜在的コモンズ」について。 ー本記事の目次ー・スケール拡大に向かわないという希望・サル…
マツタケその2:汚染という可能性、自己完結しない脆弱な個、マルチスピーシーズ人類学と仏教哲学の邂逅(マツタケ 不確定な時代を生きる術 / Anna Tsing, 赤嶺淳)
前回に続き「マツタケ 不確定な時代を生きる術」から、マツタケをめぐるマルチスピーシーズ・ワールド、人間とマツと菌類の生の絡み合いの物語を掘り下げていきたい。 ー本記事の目次ー・Contamination 汚染:染め合う・…
マツタケをめぐる生命と経済の絡まり合い、進歩を前提としない資本主義、マルチスピーシーズによる世界協働構築(マツタケ 不確定な時代を生きる術 / Anna Tsing, 赤嶺淳)
「マツタケ 不確定な時代を生きる術」2021年を振り返ってトップ5に入る本。 著者は米国の文化人類学者 Anna Tsing、訳は赤嶺淳。原題「The Mashroom at the End of the world」と…
種から種へ。自家採種を通じてみえてくる植物の姿と枯れの凄み。[協生農法実験記録⑧]
植物観察家・鈴木純さんの著書「命つながるお野菜の一生」が好きすぎて、色々と観察しながら自家採種。 今回は、ピーマン、ナス、紫蘇、トマト、マリーゴールド、ルッコラ、コリアンダー、蓼藍、バジル、オクラ、ほうき草などなど。 も…
いのちはのちのいのちへ。被害者・加害者の構図を乗り越える壮絶な水俣病私史(常世の舟を漕ぎて 熟成版 / 緒方正人・辻信一)
「いのちはのちのいのちへ、のちのちのいのちへとかけられた願いの働きに生かさるる」 「チッソは私であった」の著者・緒方正人さんの壮絶な水俣病私史「常世の舟を漕ぎて 熟成版」聞き手・編者 辻信一さん、出版は宗さんの株式会社素…
生命の総体としての土壌、水と空気の通り道、菌糸と磐座(土中環境 / 高田宏臣)
高田さんの「土中環境」生命の総体としての土壌の全体性を踏まえ、抜本的な大地の再生に迫る本。 サブタイトルは「忘れられた共生のまなざし、蘇る古の技」。建築における土中環境の着眼思想(眼差し)と、日本の伝統的な技法を土台とし…
目にみえない存在たちへの畏怖。ぬか床や変形菌に関するおすすめ小説(沼地のある森を抜けて / 梨木香歩, 蛍女 / 藤崎慎吾)
はじまりは、「ぬかどこ」だった。 先祖伝来のぬか床が、うめくのだーーー 最近、ぬか床や菌や微生物の話ばかりしているせいか、ぬか床ライフを楽しむためのおすすめ本ありますかと聞いていただくことが増えたのですが、いつもおすすめ…
菌の声。縁起としての発酵。生命の連環への入り口をひらく。(菌の声を聴け / 渡邊格・麻里子)
タルマーリーの渡邊さんの新著「菌の声を聴け」。 とても面白かった。 面白かったというか、面白いとかを超えて読んでいて胸が熱くなってしまった。 パンやビール、お酒作りなどとは繊細さが全く異なるのですが、日々ぬか床のお手入れ…
森のバロック③:生命システムを内部から観ようとする南方生命論とオートポイエーシス -なぜ食べると食べられるは同じことなのか-
前回は熊楠と粘菌について書きました。 今回は、森のバロック第五章より、オートポイエーシス論なども参照しながら、そうした熊楠の生命論に迫っていきたいと思います。そこには、近現代社会システムが前提としてきた「自律的な主体」に…
森のバロック②:分ける知性の呪縛から解放する「南方粘菌学」-枯れ木に花咲くを驚くより、生木に花咲くを驚け-
粘菌って菌類ですよね…? 南方熊楠は、博物学や民俗学の分野での近代日本の先駆者的存在であると同時に、生物学、特に粘菌研究者としても知られているわけなので、そういう話をしているとたまに聞かれることがあります。 が、粘菌は菌…
安易な同調や対立ではなく、差異を差異のままにとどめておく力。信仰の尊さと盲目の危うさと。(鹿の王 水底の橋 / 上橋菜穂子)
上橋さんの物語はやっぱりやっぱり面白い。医療小説でありながら、ウイルスや菌のあり方を人の内側や社会と重ね合わせた前作で登場した、オタワル医術の名医ホッサルのその後を描いた続編「鹿の王 水底の橋」 最初は淡々と物語が進んで…
森のバロック①:南方マンダラの世界をのぞいてみる-無意識の集団記憶や共同幻想が生まれるメカニズム-
「わたしはこの本で、南方熊楠の生涯のうちで「最も深く体験されたもの」、それだけを注意深く取り出そうとした」 南方熊楠の偉人・奇人的人物像や客観的な経歴に関わる文献は多くあるが、論文や書簡に記載された言葉だけでなく、その内…