ベランダでもできる小さな生態系。協生プランターのすすめ [協生農法実験記録⑦]

ベランダでもできる小さな生態系。協生プランターのすすめ [協生農法実験記録⑦]

有り難いことにこのブログを読んで協生農法に興味を持ってくださって、うちでもやりたいのですがとご連絡をいただくことが増えてきました。その中で、プランターではできませんかという質問をいただくことがあり、そういえば協生プランターのことを書いていなかったなということで、今回は協生プランターのことを。

協生農法(およびシネコカルチャー)について
「協生農法(シネコカルチャー)」は、食糧生産と環境破壊のトレードオフや、人か自然かの二元論を乗り越えて、生態系が本来持つ力を多面的・総合的に活用する生態系構築技術(詳細はSony CSLのHP )。学術的には、人の営みが生態系構築および生物多様性の回復に貢献していく「拡張生態系」という考え方に根ざしています。(株)桜自然塾の大塚隆氏によって原型が創られ、Sony CSLの舩橋真俊氏によって学術的定式化がなされています。

ご興味ある方はEcological Memesで開催しているセッションの様子や記事もご覧ください。
生態系の“あいだ”を回復・構築する「協生農法」とは?
地球の生態系に包摂された生命として人はどう生きるのか 〜自然と人の“あいだ”を取り戻す協生農法〜
EMF21レポート② シネコカルチャー(協生農法)とは何か【前編】
人間と自然の共繁栄のかたち。生態系を拡張させる「協生農法」の実践
・拡張生態系のパラダイム – シネコカルチャーの社会実装の契機をさぐる-(舩橋真俊氏) 

【シネコカルチャー実験記録の記事一覧】
耕作放棄地で協生農法をはじめました[シネコカルチャー実験記録①]
植物は生長に必要な物資を自ら調達する~横に伸びるトマトと協生農法実践マニュアル~[シネコカルチャー実験記録②]
遠野で協生農園を訪問。美しき緑の焚き火。[シネコカルチャー実験記録③]
畝をつくらない区画をつくってみた。[シネコカルチャー実験記録④]
結実過程のドラマ。オクラ、ピーマン、トマト、ジャガイモほか。[シネコカルチャー実験記録④]
全36科87種。Scrapboxで協生菜園の植生リストをつくってみました。[シネコカルチャー実験記録⑤]
二子玉川のコミュニティ畑プロジェクト「タマリバタケ」で協生農法はじまります [シネコカルチャー実験記録⑥]
ベランダでもできる小さな生態系観察。協生プランターのすすめ [シネコカルチャー実験記録⑦]
種から種へ。自家採種を通じてみえてくる植物の姿と枯れの凄み。[シネコカルチャー実験記録⑧]
タマリバタケの協生菜園のその後<秋分〜冬至>[シネコカルチャー実験記録⑨]
協生菜園で育てた蓼藍で生葉染め、そして種取り。植物の生命力を身にまとう。[シネコカルチャー実験記録10]
協生菜園に春がきた<タマリバタケの冬至〜春分>[シネコカルチャー実験記録11]
協生農法の生みの親・野人ムーさんのところに行ってきました[シネコカルチャー実験記録12]
無肥料・無農薬でも虫に食われないのはなぜか。混生密生の多様性がもたらす縁起と恵みの実感。[シネコカルチャー実験記録13]
埼玉・春日部の農園で協生農法をご一緒にやりたい方を募集しています。[シネコカルチャー実験記録14]
春日部にて協生圃場プロジェクトがスタート。秋分の集いにて[シネコカルチャー実験記録15]
不耕起栽培、ゲイブ・ブラウンの土を育てる、拡張生態系における人の役割と希望。
混生密生の世界と収穫による生態系への介入[協生農法実験記録17]
かすかべ協生農園のお野菜詰め合わせセット販売
※このブログは、個人の実験的な観察・実践記録であり、公式なやり方や内容を記載しているものではありません。

まず、結論から言うと協生農法はプランターからでもはじめてみることができます。

ソニーコンピューターサイエンス研究所と一般社団法人シネコカルチャーが出している「協生理論学習キット」では、地植え(露地タイプ)とプランタータイプの2種類が紹介されおり、協生農法の生態系の最小単位(シネコポータルと呼ばれます)をプランターの中に構築することで、協生理論を学び、観察し、体験しいくことができます。

そういえば、僕が最初に協生農法に出会ったのも、一社シネコカルチャーの福田さんがやられていた協生プランターでした。もちろん場所があれば地植えでやってみることをおすすめしますが、そうしたスペースがない場合は、プランターでも十分にできます。

Ecological Memes Forum 2019より

地球の生命の歴史を基づいて開発された協生農法の方法論

これはマニュアルにはあまり書かれていませんが、個人的にとても面白いのは、協生農法の方法論が、生物が海から陸に上陸し、動植物が協同して陸地の表土の仕組みを作り上げた地球の長い生命の歴史に基づいていること。

なので、土を用意する際にも、プランターの中に地球の地層を再現していくかのように石類、赤土、黒土と順に重ねていきます。そうしたら中心に果樹を植え、周囲に野菜や花の苗、種の順番で植えていきます。

ポイントは混生密生。一種類の植物のための「生理最適」ではなく、複数種が競争・共生しながらそれぞれ最大限の生育を達成する「生態最適」を目指すのが協生農法です。

タマリバタケで生理最適と生態最適についてこどもたちにお話ししているの図

なるべく色々な種類の植物を取り混ぜて、タネは7種類以上の科を混ぜることが推奨されています。土中の空間的多様性のためイモ類を植えたり、苔、シダ植物、地衣類なども加えます。

なぜ果樹なのか?とよくきかれますが、福田さんのお話しで印象に残っているのは、植物が育つ上で必須となる物質循環を創り出すため、というもの。果樹を植えることで、菌の合成や土の湿度保全機能に加えて、やってくる鳥の糞から土のリン酸が補われるという効果があったり、落葉樹であれば葉っぱが落ちてカリウムが補われる。そうして、窒素、リン酸、カリウムの三要素が勝手に循環するシステムを創り出せれば肥料や農薬を使う必要がなくなる、というわけです。

あと、ベランダなどだと日照時間が気になる方もいると思いますが、協生理論学習キットでは1日4時間ほど日照が必要とされています(うちでは現在1日1-2時間程度のかなり日照時間の短い場所でも実験してみています)。

ということで、水と光と空気、土と植物があれば(これらも地球生命の数億年の歴史の産物なわけですが)、どこでも協生プランターでもはじめられますので、ご興味ある方はぜひチャレンジしてみてください。

生態系の様々な相互作用の中で、日々どんな植物がどんな風に生長していくか、わくわくしながら待つこと。それってすごく楽しいのです。

最初に苗・タネ・苔、シダ植物を加えた時の様子
タネたちが芽を出し、表土を覆っていく
地植え前。相当間引き収穫していたけれどもりもりに。
地植え前。初めてだったので何もわからず手探りでしたが、今ならもう少し多様な植生でやっていたなと思います。