2017年のBook  of the Year 〜身体知性、散逸構造とゆらぎ、センスオブワンダー

2017年のBook of the Year 〜身体知性、散逸構造とゆらぎ、センスオブワンダー

ここのところ自分の思考の変遷を辿るということをしてみているのだけど、
その一環で、もはや毎年恒例となっている読んだ本、読んでよかった本の振り返り。

こうして振り返ってみると、2017年は、

 

1.明らかに比重が増えた/広がった領域

・宇宙論や量子物理学など物理学系と、自己組織化や複雑系などの生物進化学系、そして南方熊楠など、そこに哲学や東洋思想と掛け合わせた領域

・これは「企業進化論」での散逸構造との出会いが大きく、その後読む本が大きくシフトしているし、元々のテーマである「個人のビジョンや生きる感覚を起点に価値創造するイントラプレナーシップ」に、「新たな秩序を生み出し続ける自己変革型組織/社会」が掛け算された探索が進み、自分なりにアウトプットしていく機会にもつながった

・ここの領域は、来年も読みたい本リストを見ると、ここの領域は全く明るくないことばかりでまだまだ読みたい本がたくさんある感じ

・あとは、出産が近づくにつれ増えた育児・出産関連本(一方で、男性育休・育児に関する情報は限定的であることも痛感)


2. 引き続き継続して興味があるらしい領域

・「日本の中空構造/河合隼雄」「日本的霊性/鈴木 大拙」「神道とは何か/鎌田東二」など、神道や禅や修験道などの日本に根付く精神性や「センスオブワンダー」のような自然とのつながりの理解と探求

・今年はその延長で身体性や文化に昇華して、「日本の身体/内田樹」や「文化とは何だろう/鶴見俊輔」あたりがジャストミートした模様


3.あまり読まなくなった領域

・いわゆるビジネス書的なものはあまり読まなくなった(気になるものはピンポイントで本屋で斜め読み)

・そんな中でも、読んでたのは未来予測系と、IoT関連の仕事も多かったのでその周辺を再読

 

4. 体験の変化

・図書館の素晴らしさに気づいた(利用度がかなり向上)ことと、ピンときた本については該当箇所とその時のインスピレーションを例え1パラでも良いから、だぁーと書き留めておくスタイルが定着したこと

 

5. 前年からの変化

2016年の読んでよかった本TOPが、ティッピングポイント/マルコム・グラッドウェルだったことを思うと、複雑性やシステム変革というテーマは変わらずも、マクロ的なシステムだけでなく、宇宙から個の身体性、細胞まで、ミクロ的視点にも幅が広がっていった感じ。

そういう意味では、医療小説でありながら、ウイルスや菌のあり方を人や社会と重ね合わせた壮大な世界観とか、自分の内側の宇宙(マイクロコスモス)に広がっていくような文化人類学的な問いかけに溢れる上橋菜穂子さんの「鹿の王」に、とても惹かれたのも必然だったのかもしれない。

という感じでした。

 


2017年の読んでよかった本TOP5

ということで、独断と偏見によるBook of the Year 2017。

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1:日本の身体 / 内田樹 
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【読書メモ】分断や二極化を乗り越えるための身体的叡智(内田樹/日本の身体)

新年早々、圧倒されたのがこの一冊。

個人的に、武道や能をはじめとする身体性に関する知恵(身体知性)、神道や修験道などにみられる自然と共生していく生命的知性、そして禅や日常的儀礼に組み込まれている瞬間的に自分自身をマネジメントする精神的知性の3つは、これからの時代にグローバルに価値の再認識が行われてしかるべき日本の最大の文化資産だといつも言っているのですが、この本はそのうちの身体知性について、合気道家から能楽師、茶道家からマタギまで12名の身体の達人たちと内田樹さんとの対談を通じてにじみ出てくる日本人的身体論。

頭よりももっとたくさんの情報を身体は知っていて、これからはその情報(反応)にアクセスする術を持っている人の創出価値が飛躍的に高まっていく創造性の時代、身体知性とは何かを探りはじめるのにはぴったりだった1冊。

日本の身体 (新潮文庫) 

 

 

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2: 企業進化論 / 野中郁次郎 
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【読書メモ】自律型組織に必要な、散逸構造、ゆらぎの内部強化と自己触媒、セルフオーガナイジング(企業進化論 / 野中郁次郎)

1885年出版にもかかわらず、自分が2017年に手に取ったご縁に感謝したい本。

イントラプレナーシップがテーマに関わる講演等で僕がよく(遊び心の通じる場では必ず)話をする、「冷えたお味噌汁の話」、すなわち、「新たな秩序を生み出し続ける自己変革型組織(散逸構造、セルフオーガナイジング、ゆらぎの内部強化と自己触媒)」の話の、インスピレーションの原点となった本。(この話もどこかに書き留めておきたいなぁ)

毎年出ていたイントラプレナーシップカンファレンスで、個人起点でのイノベーション創造がもはや組織の変革抜きには次に進めないと確信したその2ヶ月後にこの本に出会い、その後、ブリコジーヌの散逸構造理論にインスピレーションを受けて、物理学や、あとは「生きている自己組織のシステムの特徴の一つは、構成要素に自主的なゆらぎ(平均からのずれ)が許されていること」という、清水先生のバイオホロ二クスをはじめ、生物進化学などを探りはじめたことを考えると、僕にとって2017年に最も影響のあった本と言えるかもしれない。

企業進化論―情報創造のマネジメント (日経ビジネス人文庫) 

 

 

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3: 南方熊楠の星の時間 / 中沢新一
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【読書メモ】複雑系の時代を生き抜く知恵 ~ 南方熊楠の星の時間/中沢新一 ~

柳田國男さんや折口信夫さんなどとともに日本民俗学を創出した3人のうち一人とも言われ、生物学者であり神話学者であり仏教学者でもある南方熊楠の思想を紐解いた人類学者・中沢新一さんの著書。

「生きた哲学概念」として粘菌の生態系を捉え、神話や仏教の思想構造とも紐付けながら、因果律を前提とした西洋のロゴス的な知性体系では掴みきれない、来るべき時代の学問(サイエンス)を探求した南方熊楠の思想。中沢新一さんの書き口が個人的にとても好きでした。南方熊楠賞とっているだけある本です。

量子コンピューティングなどもまさにそうですが、因果関係だけでは紐解けない、偶然性を捉えた知性体系がより求められる複雑系×身体性の時代(本来の自然世界に社会構造が急速に近似していく時代)の生き方を考えていく上で非常に示唆深い。

意識が生命や無意識から切り離され、知性が感性から切り離され、因果性が偶然性から切り離されて、人間が人間的な価値世界の内部に閉じめられてしまうことに警鐘をならていることや、偶然性を含めて捉えていくために直観や身体感覚を高めていくことの重要性に言及している点も、様々な学問領域とシンクロしていて面白かった、

 

なお、私は子育てバタバタでまだ行けてないのですが、12月19日から、国立博物館で南方熊楠生誕150周年企画展「南方熊楠-100年早かった智の人」が開催されています(3/4まで)。

あと、中沢新一さんディレクションの野生展(こちらは2/4まで)でも、南方熊楠の「因果から縁起へ」が取り上げられています。

ご興味あれば、ぜひ。

熊楠の星の時間 (講談社選書メチエ) 

 

 

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4: 文化とはなんだろうか/鶴見俊輔
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【読書メモ】現実のしっぽをつかまえる。(文化とはなんだろうか/鶴見俊輔)

思想家・鶴見俊輔さんが、多くの文化人や思想家と長年にわたり繰り広げてきた対談を、

いくつかのテーマで取りまとめた座談集「◯◯とはなんだろうか」シリーズの「文化」編。

この本を読んで強く感じたのは、そうか、文化には、政治、経済には叶わない、人々(大衆)が自分ごと化していける柔らかさがあるんだ、ということ。

特に面白かったのは、児童文学作家の今江祥智さん、上野瞭さんと1972年に行われた、センスとナンセンスに関する対談。

やっぱり鶴見さんの言葉がものすごくて、ナンセンスを「存在の鼓動に対する新しい感触」だなんていってしまうわけです。

「存在は究極のところでナンセンスにぶつかるわけです。なのに、もし子供にセンスから教えると、ある時にセンスの不合理生を考えたらもう、全然やる気を無くしちゃうわけですよ。始めにナンセンスに浸ると、センスそのものはその後、生きる技術として部分的な正当性を与えるとしても、全体はナンセンスの中にあるものとして安住できる」

なお、軽井沢の絵本の森美術館は、この本を読んだ後にいくと味わいが一気に深まるのでオススメです。

 文化とは何だろうか―鶴見俊輔座談

 

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5: センス・オブ・ワンダー レイチェルカーソン 
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【読書メモ】伊豆の黄昏とレイチェルカーソンのセンス・オブ・ワンダー

子どもが生まれる前のタイミングで、出会えてよかったと心から思った一冊でした。

すでに多くの人におススメしてますが、本当に一人でも多くの人に読んでほしい。

そして、併せて 鎌田東二さんのセンスオブワンダーにも触れるのがおすすめです。

 センス・オブ・ワンダー

 

以上、2017年のbook of the yearでした。

 

2018年に読みたい本

ちなみに、今年は読み切れず、2018年に読みたい本をとりあえず並べてみると、下記のような感じに。

 

 

・自己組織化する宇宙(エリッヒ・ヤンツ)

・粘菌ーその驚くべき知性

・中動態の世界~意志と責任の考古学

・南方熊楠と柳田国男往復書簡

・なめらかな社会とその敵

・華厳の思想

・遊びと人間

・複雑系組織論(再読)

・コネクトームー脳の記憶はどのように「私」を作り出すのか

・ブッタが解いたこと

・ネガティブ・ケイパビリティ 答えの出ない事態に耐える力

 

何かこれ面白いよというおすすめがあれば、ぜひ教えてください。

子育て・教育思想関連も、なんだかあまりグッとくるものにまだ出会えていないので、オススメあればぜひ教えてください。

 

2017年に読んだ本リスト

最後に、2017年読んだ本リストの棚卸し(36冊、ほぼ読んだ順)。
amazon履歴を参考にしてるので、図書館で借りて抜け落ちてる本以外は、大体はいっているはず。

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・日本の身体 内田樹 ★

【読書メモ】分断や二極化を乗り越えるための身体的叡智(武道家・内田樹 /「日本の身体」)

・全員経営 ―自律分散イノベーション企業 成功の本質 野中 郁次郎

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・企業進化論 / 野中郁次郎 ★

【読書メモ】自律型組織に必要な、散逸構造、ゆらぎの内部強化と自己触媒、セルフオーガナイジング(企業進化論 / 野中郁次郎)

・日本的霊性 (岩波文庫) 鈴木 大拙

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・中空構造日本の深層 (中公文庫) 河合 隼雄 ★

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・2030年の情報通信技術:生活者の未来像 NTT技術予測研究会

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・目に見える世界は幻想か? 物理学の思考法 (光文社新書) 松原 隆彦

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・デザインの次に来るもの 安西 洋之

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・文化とはなんだろうか/鶴見俊輔 ★

【読書メモ】現実のしっぽをつかまえる。(文化とはなんだろうか/鶴見俊輔)

・自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか (青春文庫) 岡本 太郎

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ー 大人になるまで目に触れ耳にしてきたすべてが、ものを自分に魂で直接にとらえるという、自由で、自然な直感力をにぶらせていることも確かです ー 岡本太郎

・今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫) 岡本 太郎

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・モモ ミヒャエルエンデ

【読書メモ】時間は盗まれると死んでしまう(モモ/ミヒャエル・エンデ)

・複雑系組織論 多様性・相互作用・淘汰のメカニズム ロバート・アクセルロッド

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・菜根譚

【読書メモ】生き方の表裏としての働き方改革と菜根譚

・非線形科学 同期する世界 (集英社新書) 蔵本 由紀

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・生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)  福岡 伸一

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【読書メモ】ウディアレンと生物学 – 壊す仕組みと動的平衡 –

・センス・オブ・ワンダー レイチェルカーソン ★

【読書メモ】伊豆の黄昏とレイチェルカーソンのセンス・オブ・ワンダー

・異邦人/カミュ

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・変身/カフカ

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・私たちはどこまで資本主義に従うのか―――市場経済には「第3の柱」が必要である ヘンリー・ミンツバーグ

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・神道とは何か 鎌田東二

【読書メモ】自然と共生していくための生命的知性としての神道(神道とは何か/鎌田東二)

・オン・ザ・ロード/ジャンケルアック

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・南方熊楠の星の時間 / 中沢新一 ★

【読書メモ】複雑系の時代を生き抜く知恵 ~ 南方熊楠の星の時間/中沢新一 ~

・世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 山口 周

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・2030年ジャック・アタリの未来予測 ―不確実な世の中をサバイブせよ ジャック・アタリ

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4833422409/ref=oh_aui_detailpage_o08_s00?ie=UTF8&psc=1

・自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則 (ちくま学芸文庫) スチュアート カウフマン

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・ホモ・ルーデンス (中公文庫)  ホイジンガ

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・学問の春―“知と遊び”の10講義 (平凡社新書) 山口 昌男

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・嫁ハンをいたわってやりたい ダンナのための妊娠出産読本 (講談社+α新書)  荻田 和秀 

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・鹿の王/上橋菜穂子 

【読書メモ】自分の内側に広がる宇宙に想いを馳せる ~ 鹿の王/上橋菜穂子 ~

・ママはテンパリスト1−4

http://amzn.asia/3Rxh35B

・マンガで読む 妊娠・出産の予習BOOK 単行本(ソフトカバー)  フクチ・マミ  (著)

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・男が育休を取ってわかったこと 池田 大志

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・創造性とは何か 川喜田二郎 ★

【読書メモ】モチベーションの誤解と主体性の鍵 ~ 創造性とは何か/川喜田二郎 ~

・トランジッション/ウィリアム・ブリッジズ ★

【読書メモ】自己変容なしに、変化は機能しない(トランジッション/ウィリアム・ブリッジズ)

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