遠野で協生農園を訪問。美しき緑の焚き火。[協生農法実験記録③]

遠野で協生農園を訪問。美しき緑の焚き火。[協生農法実験記録③]

先日遠野を訪ねる機会があり、一社シネコカルチャーのkeiさん(マフさん)がやられている協生農園をみせていただきました。

協生農法(およびシネコカルチャー)について
「協生農法(シネコカルチャー)」は、食糧生産と環境破壊のトレードオフや、人か自然かの二元論を乗り越えて、生態系が本来持つ力を多面的・総合的に活用する生態系構築技術(詳細はSony CSLのHP )。学術的には、人の営みが生態系構築および生物多様性の回復に貢献していく「拡張生態系」という考え方に根ざしています。(株)桜自然塾の大塚隆氏によって原型が創られ、Sony CSLの舩橋真俊氏によって学術的定式化がなされています。

ご興味ある方はEcological Memesで開催しているセッションの様子や記事もご覧ください。
生態系の“あいだ”を回復・構築する「協生農法」とは?
地球の生態系に包摂された生命として人はどう生きるのか 〜自然と人の“あいだ”を取り戻す協生農法〜
EMF21レポート② シネコカルチャー(協生農法)とは何か【前編】
人間と自然の共繁栄のかたち。生態系を拡張させる「協生農法」の実践
・拡張生態系のパラダイム – シネコカルチャーの社会実装の契機をさぐる-(舩橋真俊氏) 

【シネコカルチャー実験記録の記事一覧】
耕作放棄地で協生農法をはじめました[シネコカルチャー実験記録①]
植物は生長に必要な物資を自ら調達する~横に伸びるトマトと協生農法実践マニュアル~[シネコカルチャー実験記録②]
遠野で協生農園を訪問。美しき緑の焚き火。[シネコカルチャー実験記録③]
畝をつくらない区画をつくってみた。[シネコカルチャー実験記録④]
結実過程のドラマ。オクラ、ピーマン、トマト、ジャガイモほか。[シネコカルチャー実験記録④]
全36科87種。Scrapboxで協生菜園の植生リストをつくってみました。[シネコカルチャー実験記録⑤]
二子玉川のコミュニティ畑プロジェクト「タマリバタケ」で協生農法はじまります [シネコカルチャー実験記録⑥]
ベランダでもできる小さな生態系観察。協生プランターのすすめ [シネコカルチャー実験記録⑦]
種から種へ。自家採種を通じてみえてくる植物の姿と枯れの凄み。[シネコカルチャー実験記録⑧]
タマリバタケの協生菜園のその後<秋分〜冬至>[シネコカルチャー実験記録⑨]
協生菜園で育てた蓼藍で生葉染め、そして種取り。植物の生命力を身にまとう。[シネコカルチャー実験記録10]
協生菜園に春がきた<タマリバタケの冬至〜春分>[シネコカルチャー実験記録11]
協生農法の生みの親・野人ムーさんのところに行ってきました[シネコカルチャー実験記録12]
無肥料・無農薬でも虫に食われないのはなぜか。混生密生の多様性がもたらす縁起と恵みの実感。[シネコカルチャー実験記録13]
埼玉・春日部の農園で協生農法をご一緒にやりたい方を募集しています。[シネコカルチャー実験記録14]
春日部にて協生圃場プロジェクトがスタート。秋分の集いにて[シネコカルチャー実験記録15]
不耕起栽培、ゲイブ・ブラウンの土を育てる、拡張生態系における人の役割と希望。
混生密生の世界と収穫による生態系への介入[協生農法実験記録17]
かすかべ協生農園のお野菜詰め合わせセット販売
※このブログは、個人の実験的な観察・実践記録であり、公式なやり方や内容を記載しているものではありません。

まずは果樹を中心とした協生農法の最小ユニット、シネコポータル。通称、緑の焚き火。

写真だとなかなか伝わらないんですが、シネコポータル、本当に美しいんです。
新たなポータルをつくっているところ
協生農法では種をmixしてばら蒔きするのですが、好光性の種たちはごま塩のケースから…!

一番おお!っとなったのはスギナ。

スギナが地下茎であまりに繁殖するのでなかなか手強いなぁと思いながら抜いていたのですが、こちらのポータルではもふもふ生えている。Keiさんにきくと、「別にスギナは悪いことしないですからね〜」と一言。野菜丈を超えてのびてきたら切る、といった程度だそう。なるほど〜。

そして実は、スギナは悪さしないどころか、酸性〜中性の土壌にはえて、地下深くの養分を吸い上げたりアルカリ性なので土に還って土壌を中和してくれたりするそう。しかもハーブとしても頂ける。そうかぁ、土壌を回復するために助けてくれていたのかぁ。雑草とひとくくりにしてしてみてしまいがちだけど、一つ一つ実は生態系における大事な役割を担ってくれているのだなぁ。

ということで、それ以来スギナたちとのお付き合いの仕方が変わりました。
@Regenukalife

あと、いくつか実験をされていたのですが、こちらは畝をつくらないエリア

実践マニュアルには畝づくりの目的は日照条件の変化付けや水捌けの向上、農地の立体的活用などとされていて、僕のところでも畝(ただし、耕さずに土を盛るだけ)を作ってやっていたのですが、それすら必要ないかもしれないということで実験しはじめているそうです。苗などを植えるときに少しだけ表土をひっかいていく程度。自分のところでもやってみようと思います。

その日はトマト苗を植えていくお手伝いをさせていただきました(3歳半の娘も一緒に手伝ってくれました)。

花の向きを太陽の向きに合わせて植えたり、低木のベリーのエリアは藪を作るために奥側にトマトの苗を植えたり、ひとつひとつ面白いなぁ温かいなぁと思いながら。

日々色々と手探りでやっていることもあって、やっぱり実際の現場をご一緒させていただくと学びがめちゃくちゃ多い。また遠野に戻ってくる時は、どんな風になっているのか楽しみです。

手の入れ具合と多様性のマトリクスで実験していくエリアとのこと

ちなみに、協生農法に関わらず、僕にとって遠野のこの場所はとても特別なところで。

最初にお伺いして以来、心の片隅でずっと記憶が静かに呼吸をしているような感じがあったこの場所に、再びご縁をいただいて訪ねたのが今回。

脈々と連なるあまりに壮大な物語を、絶やすことなく少しでも次の未来へとつないでいくために果たして何ができるのだろうかと、自分のちっぽけさに慄きながら、それでも、ここに集いつながり合う方々や馬たち、虫や鳥や森や風や草木や土地や文化やあらゆる生命の連環と風土の記憶と生態学的諸関係の一瞬の触れ合いに、感謝と胸の高鳴りを抱かずにはいられない。

ただ、共にあれるか。
意図や期待を持たないゼロの身体。
Embracement。

何かが蠢いていく予感がした。